はじめての青色申告承認申請書 ~ギグワーカーのための書き方と手続き~
ギグワーク税金&節税ガイドをご覧いただきありがとうございます。記事執筆担当です。
ギグワーカーとして働き始め、収入が増えてきた方の中には「青色申告」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。青色申告は、正しく手続きを行うことで、税金面でさまざまなメリットを受けられる制度です。特に、最大65万円の所得控除が受けられる特典は魅力的です。
しかし、青色申告をするためには、事前に税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」という書類を提出し、承認を受ける必要があります。この申請書と聞くと、難しそう、どう書けば良いのだろう、いつまでに出せば良いのだろう、といった不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、税金や確定申告の知識が全くないギグワーカーの皆様に向けて、青色申告承認申請書について、その目的から具体的な書き方、提出方法までを分かりやすく解説します。この記事をお読みいただければ、承認申請書の全体像を理解し、安心して手続きを進める一歩を踏み出せるでしょう。
青色申告承認申請書とは何か
まず、「所得税の青色申告承認申請書」とは、その名の通り、確定申告を青色申告で行いたいという意思を税務署に伝えるための書類です。この申請書を提出して税務署の承認を受けることで、初めてその年の所得について青色申告を行うことができるようになります。
つまり、青色申告のメリットを享受するためには、確定申告の時期(通常は翌年の2月16日から3月15日)よりも前に、この申請書を提出しておく必要があるということです。
青色申告承認申請書の提出時期
承認申請書には提出期限があります。いつまでに提出するかは、事業を開始した時期によって異なります。
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その年の1月15日以前から事業を開始している場合: その年の3月15日までに提出します。例えば、2024年の1月15日以前にギグワークを始めていて、2024年分の所得を青色申告したい場合は、2024年の3月15日までに申請書を提出する必要があります。
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その年の1月16日以後に事業を開始した場合: 事業を開始した日(所得を得る活動を始めた日)から2ヶ月以内に提出します。例えば、2024年7月10日にギグワークを始めた場合は、2024年9月9日までに申請書を提出する必要があります。
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新しく開業する場合(個人事業の開業届も出す場合): 開業届と一緒に、または開業日から2ヶ月以内に提出するのが一般的です。多くの場合、開業届と青色申告承認申請書を同時に提出します。
提出期限を過ぎてしまった場合は、その年分の所得については青色申告はできず、白色申告となります。青色申告ができるのは、申請書を提出した年の翌年分からとなりますので注意が必要です。
申請書の入手方法
青色申告承認申請書は、以下の方法で入手できます。
- 税務署の窓口: 最寄りの税務署で直接受け取ることができます。
- 国税庁のウェブサイト: 国税庁のウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」からPDF形式でダウンロードして印刷できます。
- 会計ソフト: 会計ソフトによっては、入力内容をもとに申請書を作成・印刷できる機能があります。
ウェブサイトからダウンロードする方法が、自宅で準備できて便利でしょう。
青色申告承認申請書の書き方
申請書の記入項目を見ていきましょう。各項目について、ギグワーカーの方がどのように記載すれば良いかを解説します。
記入する際は、税務署に提出する用と、ご自身で控えとして保管する用の2部を作成することをおすすめします。
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税務署長: ご自身の納税地(通常は住所地)を管轄する税務署名を記入します。管轄税務署は、国税庁のウェブサイトなどで調べることができます。
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提出日: 申請書を提出する日付を記入します。
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納税地: ご自身の住所地を記入します。
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氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー): ご自身の氏名、生年月日、マイナンバーを正確に記入します。
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職業、屋号: 職業は「ギグワーカー」「個人事業主」「Webライター」など、ご自身の活動内容に合ったものを記入します。屋号は、使用している場合は記入します。屋号がない場合は空欄で構いません。
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事業所等: 自宅以外に事務所などを借りている場合は記入します。自宅を事業所としている場合は、納税地と同じ住所を記入します。
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所得の種類: ギグワーカーとしての収入は、通常「事業所得」に該当します。「事業所得」に丸をつけます。
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今までに青色申告の承認を受けたこと又は取り消されたことの有無: 過去に青色申告をしたことがなければ「無」に丸をつけます。
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本年1月1日現在において事業を営んでいる場合: 申請書を提出する年の1月1日時点で既にギグワークを事業として行っていた場合は、該当する項目に記入します。多くの場合、事業所得の区分に「事業所得」と記入し、本年1月1日から事業を営んでいるか否かに丸をつけ、屋号などを記入します。
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本年1月16日以後に事業を開始した場合又は上記(8)に該当する者: その年の1月16日以後にギグワークを始めた場合は、ここに記入します。事業開始年月日を記入します。
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相続による事業承継の有無: 事業を相続したなどの特別なケースでなければ「無」に丸をつけます。
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その他参考事項:
- 記帳の方式:
青色申告には、簡易な記帳による10万円控除と、複式簿記による記帳による65万円(または55万円)控除があります。
- 複式簿記: 貸借対照表や損益計算書を作成するための複雑な記帳方法です。65万円控除を目指す場合に必要になります。会計ソフトを使えば比較的容易に行えます。
- 簡易帳簿: 収入や経費を単一の項目ごとに記録する比較的簡単な方法です。10万円控除を目指す場合にこの方法でも構いません。 どちらを目指すかによって選択しますが、将来的に65万円控除を目指すつもりであれば、「複式簿記」を選択しておくと良いでしょう。最初は簡易な記帳から始めたい場合は、「簡易帳簿」を選択することも可能です。
- 備付帳簿名:
選択した記帳方式に応じて、備え付ける主な帳簿名を記入します。
- 複式簿記の場合: 総勘定元帳、仕訳帳などを記入します。会計ソフトを使用する場合は、ソフトで作成される主要な帳簿名を記入すれば良いでしょう。
- 簡易帳簿の場合: 現金出納帳、売上帳、仕入帳、経費帳などを記入します。 具体的な帳簿名が分からなくても、まずは申請書を提出することが重要です。後から記帳方法を変えることも可能です。
- 関与税理士: 税理士に税務を依頼している場合に記入します。ご自身で手続きされる場合は空欄で構いません。
- 記帳の方式:
青色申告には、簡易な記帳による10万円控除と、複式簿記による記帳による65万円(または55万円)控除があります。
記入例やより詳しい記載方法は、国税庁のウェブサイトにある記入要領や、税務署の窓口で質問することで確認できます。
青色申告承認申請書の提出方法
申請書が作成できたら、税務署に提出します。提出方法はいくつかあります。
- 税務署の窓口に提出: 管轄の税務署に直接持参します。その場で受付印を押してもらった控えを受け取れます。
- 郵送で提出: 管轄の税務署宛てに郵送します。控えに受付印を押して返送してもらいたい場合は、申請書(提出用と控用)と、切手を貼った返信用封筒を同封します。
- e-Taxで提出: マイナンバーカードとカードリーダーなどがあれば、自宅のパソコンからe-Taxソフトや確定申告書等作成コーナーを利用してオンラインで提出できます。
控えは、後々提出したことを確認する際に重要になりますので、必ず保管しておきましょう。特に郵送の場合は、返信用封筒を忘れずに同封してください。
提出後の流れ
青色申告承認申請書を提出した後、税務署から特に連絡がない場合、原則として申請は承認されたと考えて良いでしょう。却下されるケースは、提出期限を大幅に過ぎているなど、申請要件を満たさない場合などに限られます。
承認された旨の通知は、通常は送られてきません。提出した控えにご自身で受付印が押されていることを確認しておけば十分です。
まとめ
青色申告承認申請書は、青色申告のメリットを享受するために、確定申告に先立って提出が必要な大切な書類です。初めて見る方にとっては少し難しく感じるかもしれませんが、この記事で解説した項目に沿って記入すれば、決して難しい手続きではありません。
提出期限に間に合うように、早めに準備を始めることが重要です。まずは国税庁のウェブサイトから申請書をダウンロードしてみたり、お近くの税務署で申請書を入手してみたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。
申請書の書き方や提出時期についてご不明な点があれば、管轄の税務署に問い合わせることも可能です。焦らず、一歩ずつ手続きを進めていきましょう。
この記事が、ギグワーカーの皆様の青色申告への第一歩を後押しできれば幸いです。