ギグワーカーが知っておきたい還付申告 ~確定申告で税金が戻ってくるケース~
ギグワーカーの皆さん、こんにちは。ギグワーク税金&節税ガイドです。
ギグワークを始めて、「確定申告」という言葉を聞いて、難しそう、税金を納めるのが怖い、といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。確かに確定申告は税金を納めるための手続きの一つですが、実は、源泉徴収などで「払いすぎた税金」を国から返してもらうための手続きでもあります。この「払いすぎた税金を取り戻す手続き」のことを「還付申告(かんぷしんこく)」と呼びます。
特にギグワーカーの方は、取引先から報酬を受け取る際に「源泉徴収」されているケースがあり、還付申告によって税金が戻ってくる可能性があります。この記事では、還付申告とはどのようなものか、どのような場合に税金が戻ってくるのか、そしてその手続きについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。
還付申告とは何か
還付申告とは、確定申告を行うことで、所得税の還付(税金が戻ってくること)を受けるための手続きです。
通常、確定申告というと、1年間の所得を計算して、それに対する所得税額を計算し、不足している税金を納めるイメージが強いでしょう。しかし、年末調整を受けていない方や、すでに一定額の税金を前払いしている場合など、本来納めるべき税金よりも多く納めていることがあります。このような場合に、確定申告によって正しい税額を計算し、払いすぎた分を国から返してもらうことができるのです。
還付申告は、一般的な確定申告の時期(原則として毎年2月16日から3月15日まで)に行うこともできますし、その年(1月1日から12月31日まで)の所得に関する還付申告であれば、翌年の1月1日から5年以内であればいつでも提出することができます。
ギグワーカーが還付申告できる主なケース
ギグワーカーの方が還付申告できる代表的なケースをいくつかご紹介します。
報酬から源泉徴収されている場合
Webライター、デザイナー、プログラマーなど、特定の業務に対する報酬を受け取る際、取引先(クライアント)が報酬からあらかじめ一定の税金(所得税の源泉徴収)を差し引いて支払っていることがあります。
例えば、報酬10万円に対して源泉徴収税額が1万210円(10.21%)である場合、実際に受け取る金額は8万9,790円となります。この差し引かれた1万210円は、皆さんが国に前払いした税金というイメージです。
1年間の所得全体で計算した結果、実際に納めるべき税金がこの源泉徴収された金額よりも少なかった場合、その差額が還付されることになります。特に、年間の所得が所得税の基礎控除額(48万円)以下である場合、所得税はゼロになるため、源泉徴収された税金は全額還付される可能性が高いです。
各種の所得控除を受ける場合
所得から差し引くことができる「所得控除」には様々な種類があります。確定申告でこれらの所得控除を申告することで、課税される所得が減り、結果として税金が少なくなり、還付につながることがあります。
ギグワーカーの方が関係する可能性のある主な所得控除には、以下のようなものがあります。
- 医療費控除: 1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が一定額を超える場合に受けられる控除です。
- 社会保険料控除: 国民健康保険料や国民年金保険料など、ご自身で支払った社会保険料の全額を控除できます。ギグワーカーとして独立した場合に関係することが多いでしょう。
- 生命保険料控除、地震保険料控除: 保険会社から送られてくる控除証明書に基づいて申告できます。
- 寄附金控除: ふるさと納税や、特定の団体への寄附などを行った場合に受けられる控除です。
これらの所得控除は、年末調整を受けている会社員も利用できますが、ギグワーカーとして開業した方や、副業収入についてご自身で確定申告を行う方も忘れずに申告することで、還付を受けられる場合があります。
年の途中で会社を辞めて年末調整を受けていない場合
会社にお勤めの方が年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合、多くの場合、退職時までに源泉徴収された所得税額は、年収に対して払いすぎている状態になっています。このような場合、確定申告(還付申告)を行うことで、払いすぎた税金を取り戻すことができます。
還付申告の手続きについて
還付申告の手続きは、基本的に通常の確定申告と同じ様式(確定申告書)を使用します。
申告に必要な書類
還付申告をする際は、以下の書類などが必要になります。
- 確定申告書: 国税庁のホームページからダウンロードするか、税務署で入手できます。e-Taxを利用する場合はオンライン上で作成できます。
- 本人確認書類: マイナンバーカードなど。
- 収入を証明する書類: 報酬の支払を受けた際に発行される「支払調書」や、取引先からの支払通知書、ご自身で作成した請求書控えや帳簿など。源泉徴収されている場合は、その金額が分かる書類が必要です。
- 所得控除に関する書類: 医療費の領収書、社会保険料(国民健康保険料、国民年金保険料)の控除証明書、生命保険料や地震保険料の控除証明書、寄附金の受領書など。
- 還付金を受け取る金融機関の口座情報: 申告書に記入します。
申告方法
確定申告書を作成したら、以下のいずれかの方法で提出できます。
- e-Tax(電子申告): 国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に従って入力するだけで申告書が作成でき、そのままインターネット経由で提出できます。マイナンバーカード方式やID・パスワード方式があります。自宅から手続きできるため便利です。
- 郵送: 作成した申告書を税務署に郵送します。
- 税務署の窓口: 税務署に持参して提出します。
申告時期
先述の通り、還付申告はその年(1月1日~12月31日)の所得について、翌年の1月1日から5年以内であれば、通常の確定申告期間(2月16日~3月15日)を過ぎてからでも行うことができます。
注意点
- 還付申告は、申告しないことによる罰則はありませんが、申告しないと払いすぎた税金が戻ってきません。心当たりのある方はぜひ申告を検討しましょう。
- 還付申告ができる期間は、申告したい年の翌年1月1日から5年間です。期間を過ぎると還付を受けられなくなりますのでご注意ください。
- 確定申告や還付申告の内容に誤りがあった場合は、「修正申告」や「更正の請求」といった手続きで訂正することができます。
- 税法は改正されることがあります。最新の情報は国税庁のホームページで確認するか、所轄の税務署にご相談ください。個別の状況に関する税務相談は税理士などの専門家にご相談ください。
まとめ
ギグワーカーとして働く中で、報酬から源泉徴収されていたり、社会保険料や医療費などを支払っていたりする場合、還付申告によって払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。
還付申告の手続きは、通常の確定申告と基本的には同じです。必要な書類を準備し、e-Taxなどを利用すれば比較的スムーズに進めることができます。
「確定申告は税金を納めるもの」というイメージだけにとらわれず、還付申告によって税金を取り戻せる可能性があることを知り、ご自身の状況に合わせて手続きを検討してみてください。まずは、1年間の収入や支払った税金、控除できるものがないかを確認してみることから始めてみましょう。
この記事が、皆さんの税金や確定申告に対する不安を少しでも和らげ、安心して手続きを進めるための一助となれば幸いです。