ギグワーカーの税金計算のしくみ超入門 ~収入から税金が決まるまでの基礎~
ギグワークを始めて収入を得るようになると、「税金はどうなるんだろう」「確定申告って必要らしいけど、何から考えればいいの?」といった疑問や不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。税金計算と聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれません。
しかし、税金がどのように計算されていくのか、その基本的なしくみを知っておくだけでも、税金に対する不安はぐっと和らぎます。この記事では、ギグワーカーの方が得た収入が、どのような段階を経て税金という形になるのか、その基本的な流れを分かりやすく解説いたします。
複雑な計算式は使いません。ご自身の収入から税金が決まるまでの道のりを、一緒に一つずつ見ていきましょう。
収入から税金が決まるまでの基本的なステップ
税金(ここでは主に所得税について解説します)は、収入そのものに直接かかるわけではありません。いくつかのステップを経て、「税金がかかる元となる金額」が計算され、そこに税率をかけて算出されます。
その基本的な流れは以下のようになります。
- 総収入金額を計算する
- 必要経費を差し引く
- 所得金額を計算する(収入 - 経費)
- 所得控除を差し引く
- 課税所得金額を計算する(所得金額 - 所得控除)
- 所得税額を計算する(課税所得 × 税率)
- 税額控除を差し引く(あれば)
- 最終的な所得税額が決定する
それぞれのステップについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
ステップ1:総収入金額を計算する
まず最初に、1月1日から12月31日までの1年間に、ギグワークやその他の活動で得たすべての報酬の合計額を計算します。これが「総収入金額」となります。
例えば、Webライターとして受け取った報酬、配達員として受け取った配達料などがこれにあたります。源泉徴収されている場合でも、源泉徴収される前の金額が収入金額となります。
ステップ2:必要経費を差し引く
次に、その収入を得るために直接かかった費用を計算します。これが「必要経費」です。
ギグワークの内容によって経費となるものは異なりますが、例えば以下のようなものが考えられます。
- 通信費: 仕事で使ったインターネット代やスマホ代の一部
- 交通費: 仕事のために移動した際の電車賃、バス代、ガソリン代など
- 消耗品費: 仕事で使う文房具、用紙、インクなど
- 打ち合わせ費用: 仕事相手との飲食代の一部
- 自宅兼事務所の場合の家賃・光熱費: 仕事に使った部分の家賃や電気代、ガス代など
必要経費は、収入から差し引くことができるため、多ければ多いほど税金のもととなる金額を減らすことができます。
ステップ3:所得金額を計算する(収入 - 経費)
総収入金額から必要経費を差し引いた金額が「所得金額」です。
所得金額 = 総収入金額 - 必要経費
この所得金額が、税金計算の出発点となります。ギグワーカーとして得た所得は、働き方や契約内容によって「事業所得」や「雑所得」に分類されることが一般的です。所得の種類によって、経費として認められる範囲などが異なる場合もありますが、基本的な考え方は同じです。
ステップ4:所得控除を差し引く
所得金額が計算できたら、次に「所得控除」を差し引きます。所得控除とは、納税者一人ひとりの個人的な事情(扶養家族がいる、生命保険に入っているなど)を考慮して、所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。
所得控除は、所得税額を計算する前の段階で所得金額から差し引かれます。代表的な所得控除には、以下のようなものがあります。
- 基礎控除: 全ての人に適用される控除です。
- 社会保険料控除: 国民健康保険料や国民年金保険料などを支払った場合に受けられる控除です。
- 生命保険料控除: 生命保険や医療保険、介護医療保険などの保険料を支払った場合に受けられる控除です。
- 医療費控除: 1年間の医療費が一定額を超えた場合に受けられる控除です。
これらの控除を差し引くことで、税金がかかる対象となる金額を減らすことができます。
ステップ5:課税所得金額を計算する(所得金額 - 所得控除)
所得金額から所得控除の合計額を差し引いた金額が「課税所得金額」です。
課税所得金額 = 所得金額 - 所得控除
この「課税所得金額」が、実際に所得税がかかる対象となる金額となります。税金計算において非常に重要な金額です。
ステップ6:所得税額を計算する(課税所得 × 税率)
課税所得金額が確定したら、その金額に所定の「所得税率」をかけて所得税額を計算します。
所得税額 = 課税所得金額 × 所得税率
日本の所得税は、課税所得金額が多ければ多いほど税率が高くなる「累進課税制度」を採用しています。したがって、課税所得金額が少ないほど税率は低くなり、税額も抑えられることになります。
ステップ7:税額控除を差し引く(あれば)
計算された所得税額から、さらに「税額控除」を差し引くことができる場合があります。税額控除は、所得金額から差し引く所得控除とは異なり、計算された税金から直接差し引くことができるものです。
住宅ローン控除などが代表的ですが、ギグワーカーの方が利用できる税額控除の種類は限定的かもしれません。利用できる税額控除があれば、ここで差し引くことで最終的な税金がさらに減ります。
ステップ8:最終的な所得税額が決定する
上記のステップを経て計算された金額が、その年の「所得税額」として確定します。
この所得税額を計算し、税務署に報告する手続きが「確定申告」です。確定申告によって、納めるべき税金の額が確定し、期日までに納税することになります。
このしくみを知ることが大切な理由
税金計算の基本的なしくみを知ることは、ギグワーカーとして働く上でいくつかの点で役立ちます。
- 経費や控除の重要性を理解できる: 収入を増やすだけでなく、必要経費を適切に計上したり、利用できる所得控除や税額控除を把握・活用したりすることが、手取り金額を増やす上で非常に重要であることが分かります。
- 日々の記録の必要性を認識できる: 正確な収入や経費を計算するためには、日々の取引や支出を記録しておくことが不可欠です。なぜ記録が必要なのかが理解できれば、面倒に感じられがちな記帳にも取り組みやすくなるでしょう。
- 確定申告への不安が和らぐ: 確定申告は、この一連の計算プロセスを税務署に報告する手続きであると理解できれば、何のために何をするのかが見えてきて、漠然とした不安が軽減されます。
まとめ
ギグワーカーの税金は、「収入から経費や控除を差し引いて、税金がかかる対象となる金額を計算し、そこに税率をかけて算出される」という基本的なしくみによって決まります。
最初はこの流れも複雑に感じられるかもしれませんが、一つずつのステップの意味を理解していくことが大切です。ご自身の収入や支出を記録し、経費や利用できる控除にはどのようなものがあるかを知ることから始めてみましょう。
具体的な記帳の方法や、確定申告の詳しい手順については、当サイトの他の記事で解説しておりますので、そちらも合わせてご参照ください。
なお、税法は改正されることもありますし、個々の状況によって適用されるルールが異なる場合もあります。この記事は一般的な情報を提供するものであり、具体的な税務判断については、必ず税務署や税理士にご確認いただくようお願いいたします。