ギグワーク税金&節税ガイド

ギグワーカーのための所得と税金のきほん ~いくら稼いだら税金がかかる?~

Tags: ギグワーカー, 税金, 所得, 所得税, 初心者

ギグワークを始めたばかりで、税金や確定申告について「何から考えれば良いのだろう」「自分の収入だと税金はかかるのだろうか」と、漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。特に「いくら稼いだら税金がかかるのか」「所得税ってどう計算されるのか」といった基本的な仕組みは、税金の手続きを進める上で非常に重要です。

この記事では、ギグワーカーの方が税金について理解するための第一歩として、収入と税金の関係、税金計算の元となる「所得」の考え方、そして所得税がどのように計算されるのか、その基本的な仕組みを分かりやすく解説します。この記事をお読みいただくことで、税金に関する疑問が解消され、今後の手続きに対する不安を少しでも和らげられることを目指します。

収入と「所得」の違いを理解する

まず、税金の話をする上で欠かせないのが、「収入」と「所得」の違いを理解することです。ギグワークで受け取った報酬の総額を「収入」(あるいは売上)と呼びます。しかし、税金はこの収入の全てにかかるわけではありません。

税金計算の元となるのは「所得」と呼ばれる金額です。所得は、収入から「必要経費」を差し引いて計算されます。

所得 = 収入 - 必要経費

ここでいう「必要経費」とは、ギグワークで収入を得るために直接かかった費用のことです。例えば、配達員の方であればガソリン代や車両の維持費、Webライターの方であればパソコンの購入費用や通信費などがこれにあたります。この必要経費を正確に計算し差し引くことで、税金がかかる対象となる所得金額が決まります。

所得税がかかる基準はいくらから?

所得税は、個人の所得に対してかかる国の税金です。では、ギグワーカーの場合、いくら所得があったら所得税がかかるのでしょうか。

所得税は、年間の所得金額が一定額を超えた場合にかかります。この「一定額」には、全ての人に適用される「基礎控除」などが関係しています。基礎控除は、所得から差し引くことができる金額の一つで、多くの納税者が適用を受けられます。令和2年分以降、基礎控除額は合計所得金額に応じて変動しますが、例えば合計所得金額が2,400万円以下の場合、基礎控除額は48万円です。

つまり、所得から基礎控除などの「所得控除」を差し引いた金額がプラスになる場合に、基本的に所得税がかかることになります。

課税される所得 = 所得 - 所得控除

特に、会社員として働きながらギグワークを副業として行っている方の場合、ギグワークでの所得(事業所得や雑所得)が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要となる場合があります。(住民税の申告が必要な場合もありますので注意が必要です。)この「20万円」という基準は、必要経費を差し引いた後の「所得」の金額であることに留意してください。

ただし、これは所得税の確定申告に関するものであり、住民税の扱いは異なる場合があること、また、医療費控除などで確定申告をすると税金が戻ってくるケースがあることなど、個別の状況により手続きが必要になる場合もあります。

所得税の計算の基本的な仕組み

所得税は、「課税される所得」の金額に税率をかけて計算されます。

所得税額 = 課税される所得 × 税率

所得税の税率は、所得が多くなるほど高くなる「累進課税制度」が採用されています。これは、所得が高い人ほど税率も高くなる仕組みです。

基本的な計算の流れは以下のようになります。

  1. 収入の合計を計算する
    • 1月1日から12月31日までの1年間のギグワークによる収入(売上)を全て合計します。
  2. 必要経費の合計を計算する
    • 収入を得るためにかかった必要経費を全て合計します。どのようなものが経費になるかについては、別の記事で詳しく解説しています。
  3. 所得金額を計算する
    • 収入合計から必要経費合計を差し引き、所得金額を計算します。
  4. 所得控除の合計を計算する
    • 基礎控除など、所得から差し引くことができる各種控除額を合計します。
  5. 課税される所得を計算する
    • 所得金額から所得控除の合計を差し引き、課税される所得を計算します。
  6. 所得税額を計算する
    • 課税される所得に、定められた税率をかけて所得税額を計算します。源泉徴収されている場合は、その金額を差し引いて納税額が決まります。

住民税についても知っておこう

所得税の他に、所得に対してかかる税金として「住民税」があります。住民税は都道府県民税と市町村民税を合わせたもので、お住まいの自治体に納めます。

住民税の計算方法も所得税と似ていますが、税率や控除額などが一部異なります。所得税の確定申告を正しく行えば、その情報が自治体に連携されるため、改めて住民税の申告を行う必要がないことがほとんどです。自治体から送られてくる通知書に基づいて納付することになります。

源泉徴収されている場合

一部のギグワークの報酬からは、支払いの際にすでに税金が差し引かれていることがあります。これを「源泉徴収」といいます。源泉徴収された税金は、所得税の「前払い」のようなものです。

確定申告では、1年間の正確な所得とそれに対する税額を計算し、すでに源泉徴収として支払った金額がある場合は、その金額を差し引いて、最終的に納めるべき税金、または還付される税金(払いすぎた税金が戻ってくること)が決まります。源泉徴収されているから確定申告しなくても良い、というわけではありませんので注意が必要です。

まず何から始めるべきか

税金について不安を感じるかもしれませんが、まずはご自身の収入と経費を正確に把握することから始めてみましょう。

この記録が、所得計算の第一歩となり、確定申告に向けた準備となります。最初から完璧を目指す必要はありません。まずはできる範囲で記録を始めてみてください。

ご自身の状況に応じた正確な税額計算や申告方法については、お近くの税務署や税理士などの専門家にご相談いただくことも有効です。

税金について正しく理解し、計画的に準備を進めることで、安心してギグワークを続けられるように応援しています。