ギグワーカーが扶養から外れるのはいくらから？ ～親や配偶者の税金・社会保険への影響～
ギグワーク収入が増えたら「扶養」はどうなる？ 初心者のための解説
ギグワークを始めたばかりの方の中には、今はまだ親や配偶者の扶養に入っているという方もいらっしゃるかもしれません。収入が増えてくるにつれて、「このまま扶養に入っていられるのだろうか」「いくら稼いだら税金が増えるのだろうか」といった疑問や不安をお持ちになることもあるかと思います。
扶養から外れるかどうかは、ご自身の税金だけでなく、扶養してくれている方（親や配偶者）の税金や社会保険料にも影響するため、正確な情報を知っておくことが大切です。
この記事では、ギグワーカーの方が知っておくべき、扶養と税金・社会保険の関係について、基本的なことから分かりやすく解説します。いくらまで稼いだら扶養から外れる可能性があるのか、その基準や注意点を確認し、ご自身の状況を把握するためにお役立てください。
税法上の扶養と社会保険上の扶養の違い
まず理解しておきたいのは、「扶養」には大きく分けて「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の二種類があるということです。そして、それぞれ扶養に入れるかどうかの基準が異なります。
- 税法上の扶養: 所得税や住民税の計算に関わる扶養です。扶養に入れることで、扶養する側（親や配偶者）が「扶養控除」という所得控除を受けられ、その結果、所得税や住民税が軽減されます。
- 社会保険上の扶養: 健康保険や年金の扶養です。扶養に入れることで、扶養される側は自分で健康保険料や年金保険料を支払うことなく、扶養する側が加入している健康保険や年金制度の被扶養者となることができます。
どちらの扶養も、ご自身の収入（または所得）が一定の基準を超えると外れることになります。
税法上の扶養の基準（所得48万円の壁）
税法上の扶養に入れるかどうかは、原則として、扶養される側の年間の合計所得金額が48万円以下であることが基準となります。
ここで重要なのは、「収入」ではなく「所得」で判断されるという点です。ギグワーカーの収入は、多くの場合、「事業所得」または「雑所得」に該当します。これらの所得は、収入金額から必要経費を差し引いて計算されます。
- 事業所得や雑所得の計算: 収入金額 - 必要経費 = 所得金額
例えば、1年間の収入が70万円だったとしても、経費が25万円かかっていれば、所得金額は45万円（70万円 - 25万円）となり、所得48万円以下という基準を満たすことになります。
よく耳にする「103万円の壁」は、主にアルバイトなどで「給与所得」を得ている方の基準です（給与収入103万円 - 給与所得控除55万円 = 給与所得48万円）。ギグワーカーの方で事業所得や雑所得が主である場合は、「収入103万円」ではなく、「所得48万円」が一つの大きな目安となります。
もし、ご自身の年間の合計所得金額が48万円を超えた場合、扶養してくれている方が税法上の扶養控除を受けられなくなります。これにより、扶養者の所得税や住民税の負担が増加します。
また、ご自身の所得が基礎控除額（48万円）などを超えると、ご自身にも所得税や住民税の納税義務が発生する可能性があります。所得税は、所得が48万円を超えると確定申告が必要になるケースがあります。住民税は、所得が市区町村によって定められた基準（一般的には45万円程度）を超えると発生し、所得の金額にかかわらず申告が必要な場合がありますので、お住まいの自治体にご確認ください。
社会保険上の扶養の基準（収入130万円の壁）
健康保険や年金の社会保険上の扶養に入れるかどうかは、原則として、扶養される側の年間の収入が130万円未満であることが主な基準となります。加えて、「扶養する人の年収の2分の1未満であること」などの条件もあります。
こちらは税法上の扶養と異なり、所得ではなく「収入」で判断されることが一般的です。つまり、収入から経費を差し引く前の金額で判断されます。
- 社会保険上の判断: 年間の収入金額で判断されることが多い（ただし、加入している健康保険組合によって詳細な規定が異なる場合があります）。
もし、ご自身の年間の収入が130万円以上になった場合、社会保険上の扶養から外れることになります。扶養から外れた場合、ご自身で健康保険や年金に加入し、保険料を支払う必要があります。具体的には、お住まいの市区町村の国民健康保険・国民年金に加入するか、要件を満たせば個人事業主向けの健康保険組合等に加入することになります。
この「130万円の壁」を超えると、ご自身の保険料負担が発生するため、手取り収入が大きく減る可能性があります。
税法上の扶養と社会保険上の扶養の比較
| 扶養の種類 | 基準となる金額 | 判断基準 | 基準を超えた場合の影響 | | :--------------- | :----------------------------- | :---------------- | :------------------------------------------------------- | | 税法上の扶養 | 年間の合計所得金額 48万円 | 所得（収入-経費） | 扶養者の税金増加、自身の税金発生の可能性 | | 社会保険上の扶養 | 年間の収入金額 130万円 | 収入 | 自身の保険料負担発生（国民健康保険、国民年金など） |
※社会保険の基準は、加入する健康保険組合によって異なる場合があります。また、60歳以上または障害者の場合は社会保険上の基準が180万円未満となるなど、例外もあります。
ギグワーカーが扶養に関して注意すべきこと
扶養の壁を意識する上で、ギグワーカーの方が特に注意すべき点をいくつかご紹介します。
- 収入と経費を正確に記録すること: 税法上の扶養の判断は「所得」で行われます。正確な所得を計算するためには、収入だけでなく、かかった経費もしっかりと記録しておくことが不可欠です。経費を漏れなく計上することは、所得を抑え、税法上の扶養の範囲内に留まる可能性を高めるためにも重要です。
- 親や配偶者との連携: ご自身の収入状況や、扶養の基準を超えそうかどうかについて、扶養してくれている親や配偶者としっかりと情報共有することが大切です。これにより、扶養者が年末調整や確定申告で正しく手続きを行うことができます。
- 基準は変更される可能性: 税法や社会保険の制度は改正される可能性があります。常に最新の情報に注意を払うようにしましょう。
- 個別の状況: 家族構成や他の所得の有無など、個々の状況によって扶養に関する取り扱いは異なります。ご自身の状況に不安がある場合は、専門機関に確認することが重要です。
今からできること：扶養の壁を意識した収入管理
扶養の壁を意識し、税金や社会保険で思わぬ負担が生じないようにするためには、日頃からご自身の収入を把握しておくことが第一歩です。
- まずは収入を記録する: ギグワークでの報酬を正確に記録しましょう。
- かかった経費も記録する: 収入を得るためにかかった経費（通信費、交通費、機材費など）も忘れずに記録しておきましょう。これが将来の所得計算の元となります。
- 年間収入・所得の見込みを把握する: 年末に近づいたら、その年の収入や所得がどのくらいになりそうか、見込みを立ててみましょう。
- 扶養者と話し合う: 扶養の基準を超えそうか、超えた場合にどうなるかなど、扶養してくれている親や配偶者と早めに相談しましょう。
まとめ
ギグワーカーとして収入を得ることは素晴らしい機会ですが、扶養に入っている方にとっては、税金や社会保険との関係を理解しておくことが非常に重要です。税法上の扶養は「所得48万円」、社会保険上の扶養は「収入130万円」が一つの目安となります。
これらの基準を超えると、扶養者の税金が増えたり、ご自身で健康保険料や年金保険料を負担する必要が生じたりします。まずはご自身の収入や経費を正確に記録し、年間での見込みを把握することから始めましょう。
もし、ご自身の状況が複雑であったり、判断に迷うことがあれば、お近くの税務署や年金事務所、または専門家である税理士に相談することをおすすめします。正確な知識を持って、安心してギグワークに取り組んでいきましょう。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談には応じられません。税法や社会保険制度は改正される場合がありますので、最新の情報やご自身の正確な状況については、必ず税務署や税理士等の専門家にご確認ください。