ギグワーカーのための経費ガイド ～初心者向け 何をどこまで計上できる？～
ギグワークを始められたばかりで、税金や確定申告について「難しそう」「何をすれば良いか分からない」と感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。特に、「経費」については、「何が経費になるのか」「どこまで認められるのか」といった疑問をお持ちかもしれません。
この経費を正しく理解し、適切に処理することは、確定申告をスムーズに進める上で非常に重要です。また、経費を適切に計上することで、税金負担を軽減することにもつながります。
この記事では、税金や経費について全く知識がないというギグワーカーの方に向けて、経費の基本的な考え方から、具体的にどのような費用が経費となるのか、そしてその記録方法までを分かりやすく解説します。この記事をお読みいただくことで、経費に関する最初の不安を解消し、確定申告に向けた第一歩を踏み出していただけるでしょう。
そもそも経費とは何か
事業所得や雑所得など、個人事業主やフリーランスとして収入を得た場合、その収入のすべてに税金がかかるわけではありません。税金は、収入から「必要経費」を差し引いた「所得」に対して計算されます。
必要経費とは、事業を行う上で直接的または間接的に必要となった費用のことを指します。例えば、Webライターであれば執筆に必要なパソコン代、配達員であれば配達に使う車両のガソリン代などがこれにあたります。これらの経費を収入から差し引くことで、税金の対象となる所得が減り、結果として税金が安くなるという仕組みです。
経費を正しく計上することは、確定申告における納税額を計算する上で非常に重要になります。
ギグワーカーに当てはまる可能性のある経費の具体例
ギグワーカーの働き方は多岐にわたるため、経費となる項目も様々です。ここでは、一般的なギグワーカーの働き方で考えられる、主な経費の例をご紹介します。
1. 通信費
インターネット回線費用やスマートフォンの通信料は、仕事の連絡や情報収集、クラウドサービスの利用などに不可欠な費用です。これらの費用は経費として計上できます。ただし、プライベートでも使用している場合は、仕事で使用した割合に応じて按分（あんぶん）する必要があります。
2. 家賃・水道光熱費（家事按分）
自宅でギグワークを行っている場合、家賃や電気代、ガス代、水道代なども事業に必要な経費の一部と考えることができます。しかし、これらも生活と仕事の両方で使用しているため、事業で使用している割合（面積や時間など）に応じて合理的に按分した金額のみを経費とします。この考え方を「家事按分」と呼びます。
3. 交通費
仕事のために移動した場合の電車代、バス代、タクシー代、車両のガソリン代、駐車場代などが該当します。配達など、車両を使用する業務の場合は、車両の維持費（保険料、税金、修理費など）も事業割合に応じて経費となる場合があります。
4. 消耗品費
業務で使用する文房具、用紙、インク、仕事用のソフトウェア、数万円未満のパソコン周辺機器などが消耗品費となることがあります。
5. 新聞図書費・研究開発費
業務に必要な知識を得るための書籍代、新聞代、セミナー受講費用、オンライン講座の受講料などが該当します。
6. 支払手数料
プラットフォームへの手数料、振込手数料、クラウドソーシングサイトの手数料などが含まれます。
7. 荷造運賃
商品を発送するための段ボール代や送料などが該当します。配達員の方であれば、配達に使用する保温バッグなどもこれに該当し得ます。
上記はあくまで一般的な例です。ご自身の業務内容に応じて、どのような費用が事業に必要か、という視点で考えてみることが大切です。
経費にする上での基本的な考え方
「事業を行う上で必要な支出かどうか」これが経費を判断する上で最も重要な基準です。個人的な支出や、事業と関連性の低い支出は経費として認められません。
判断に迷う場合は、その支出が自分の事業の売上を上げるため、あるいは事業を継続するために本当に必要なものかを考えてみてください。誰が見ても「これは事業に必要だ」と納得できる理由があるかどうかがポイントです。
経費を適切に記録する方法
経費を正しく計上するためには、日々の支出を記録しておくことが不可欠です。確定申告の際には、これらの記録に基づいて経費を集計し、税務署に申告することになります。記録がなければ、どのような支出が、いくら、いつ、何のためにあったのかを証明できません。
記録方法はいくつかあります。
1. ノートや手書きの帳簿
最も手軽に始められる方法です。日付、支払先、内容、金額などを書き留めておきます。後から見返して分かりやすいように整理して記録することが大切です。
2. 表計算ソフト（Excelなど）
パソコンやスマートフォンをお持ちであれば、Excelなどの表計算ソフトで管理するのも一般的です。項目ごとに列を分けて入力すれば、集計も比較的容易に行えます。インターネット上には、個人事業主向けの簡易的な経費管理シートのテンプレートなども公開されています。
3. 会計ソフト
簿記や会計の知識がない方でも比較的簡単に利用できる会計ソフトが多く提供されています。銀行口座やクレジットカードと連携できるものもあり、記帳の手間を大幅に削減できます。ある程度の収入が見込めるようになったり、経費の種類が増えてきたりしたら、導入を検討する価値は大きいでしょう。
どのような方法を選ぶにしても、継続して記録することが重要です。
領収書やレシートの保管について
経費として計上した支出については、原則としてその内容を証明するための書類（領収書、レシート、請求書など）を保管しておく必要があります。これは、税務調査などで経費の妥当性を確認される場合があるためです。
保管期間は、白色申告の場合は5年間、青色申告の場合は原則7年間と定められています。紙の状態で保管する方法のほか、一定の要件を満たせばスキャンデータや写真データでの保存も認められています（電子帳簿保存法）。
受け取った領収書やレシートは、紛失しないようにクリアファイルに入れたり、封筒に月ごとにまとめたりするなど、整理して保管する習慣をつけることをおすすめします。
まとめ：まずは「記録する」ことから始めましょう
ギグワーカーとして働き始めたばかりで税金や経費に不安を感じている方は、まずは日々の収入と、事業のために使ったと思われる支出を記録することから始めてみましょう。高価な会計ソフトを導入する必要はありません。まずは手書きのメモや簡単な表計算ソフトでも構いません。
「これは経費になるのかな？」と迷った支出も、まずは記録しておくことをおすすめします。後から税金の知識が増えたり、税理士の方に相談したりする際に役立ちます。
確定申告や税金についてさらに詳しく知りたい場合や、ご自身の状況に合わせて正確な判断が必要な場合は、お住まいの地域を管轄する税務署や、税理士などの専門家にご相談ください。
この記事が、ギグワーカーとして活動される皆様の税金・経費に関する不安を少しでも和らげ、確定申告に向けた準備を進める一助となれば幸いです。