ギグワーカーのための記帳方法とツール選び ～初心者向け 実践ガイド～
ギグワークを始めたばかりの方にとって、税金や確定申告は少なからず不安を感じるテーマかもしれません。特に「記帳」と聞くと、「難しそう」「どうやればいいの？」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
記帳とは、日々の収入や支出（経費）を記録することです。これは確定申告を行う上で非常に大切な作業であり、ご自身の事業状況を把握するためにも役立ちます。しかし、具体的に何をどう記録すれば良いのか、どんな方法があるのか、最初は分からないことばかりかもしれません。
この記事では、ギグワーカーの皆様が知っておくべき記帳の基本から、手書きやExcel、会計ソフトなど、具体的な記帳方法とそれぞれの選び方について、初心者の方にも分かりやすく解説します。この記事を読めば、記帳に対する不安が和らぎ、ご自身に合った方法で記帳を始める一歩を踏み出せるようになるでしょう。
記帳の基本とは
まず、なぜ記帳が必要なのでしょうか。主な目的は以下の二つです。
- 確定申告で正確な税額を計算するため
- ご自身の事業の収入や経費、利益を把握するため
所得税などの税金は、ご自身の事業で得た「所得」（収入から経費を差し引いた金額）に対してかかります。この所得を正しく計算するためには、いつ、どれだけの収入があり、どのような経費を使ったのか、正確な記録が必要になります。この記録作業が「記帳」です。
所得税の確定申告には、「白色申告」と「青色申告」があります。
- 白色申告: 比較的簡易な記帳（単式簿記など）で良いとされています。最低限、収入と経費を日付順に記録していく「法定帳簿」を備え付ける義務があります。
- 青色申告: 原則として、より詳細な記帳（複式簿記）が必要です。専門的な知識が必要に思えるかもしれませんが、会計ソフトを使えば比較的容易に行えます。青色申告には、最大65万円の特別控除など、税金面で有利なメリットが多くあります。
どちらの申告方法を選ぶにしても、収入と経費の記録、つまり記帳は不可欠です。最低限、以下の項目を記録することから始めましょう。
- 日付: 取引があった日
- 内容: どのような収入または支出か（例: Webライティング報酬、交通費、通信費など）
- 金額: 収入または支出の金額
- 取引先/支払先: 誰から受け取ったか、誰に支払ったか（任意ですが記録しておくと分かりやすいです）
記帳方法の種類と選び方
記帳方法にはいくつか種類があり、ご自身の状況や使いやすさに合わせて選ぶことができます。主な方法とその特徴を見ていきましょう。
1. 手書きで帳簿をつける
ノートや市販の簡易帳簿に、直接手書きで収入や経費を書き込んでいく方法です。
- メリット: 特別なツールは不要で、すぐに始められます。形式に厳格な決まりはないため、自由度が高いです。（ただし、法定帳簿の要件は満たす必要があります）
- デメリット: 計算や集計は自分で行う必要があり、手間がかかります。後から修正が難しい場合があります。青色申告（特に65万円控除）に必要な複式簿記を手書きで行うのは専門知識が必要で困難です。
こんな方におすすめ: * まずは少額の収入から始めており、複雑な取引がほとんどない方 * デジタルツールに抵抗がある方 * 白色申告を予定している方
2. Excelやスプレッドシートを使う
表計算ソフトを使って、オリジナルの収支表などを作成し、データを入力していく方法です。
- メリット: 集計や簡単な計算はソフトが自動で行ってくれます。自分で自由に項目を設定できます。パソコンがあれば追加費用はかかりません（ソフト代を除く）。
- デメリット: 簿記の知識が全くない場合、どのような項目を設けて入力すれば良いか、表をどう作成すれば良いかなど、ある程度の学習が必要です。関数やシートの管理に慣れが必要です。
こんな方におすすめ: * 日頃からExcelなどの表計算ソフトを使い慣れている方 * ある程度の取引量があり、手書きでは大変だと感じる方 * 自分で形式をカスタって管理したい方
簡単な収支表の例（Excel/スプレッドシート）：
| 日付 | 内容 | 収入金額 | 経費金額 | 摘要（詳細） | | :------- | :--------------- | :------- | :------- | :--------------- | | 202X/MM/DD | Webライティング報酬 | 〇〇,〇〇〇円 | | △△社からの報酬 | | 202X/MM/DD | 交通費 | | △,△△△円 | クライアント打合せ | | 202X/MM/DD | 通信費 | | □,□□□円 | 〇月分 固定回線 |
3. 会計ソフトを使う
個人事業主向けの会計ソフトを利用する方法です。最近はクラウド型のソフトが主流です。
- メリット: 簿記の知識がなくても、画面の案内に従って入力するだけで記帳ができます。銀行口座やクレジットカードと連携して自動で取引を取り込める機能を持つものが多いです。確定申告書類（青色申告決算書、確定申告書Bなど）をソフト上で簡単に作成できます。青色申告（特に65万円控除）を効率的に行うのに最適です。
- デメリット: 無料のものもありますが、機能が充実したソフトは月額または年額の利用料がかかります。
こんな方におすすめ: * 今後継続的にギグワークを続けていく予定の方 * 青色申告（特に65万円控除）を検討している方 * 記帳や確定申告の手間をできるだけ減らしたい方 * 簿記の知識がない、または学習する時間がない方
どの方法が良いかは、ご自身の年間の収入見込み額や、確定申告の方法（白色か青色か）、パソコンスキル、そしてどの程度記帳に手間をかけられるかによって異なります。まずは手書きやExcelから始めてみて、取引が増えてきたら会計ソフトに移行するという方法も可能です。
記帳を続けるコツ
記帳は継続することが大切です。負担に感じず続けるためのコツをご紹介します。
- こまめに記録する: 毎日または週に一度など、記録するタイミングを決めてしまいましょう。まとめてやろうとすると、忘れてしまったり、領収書が見つからなくなったりすることがあります。
- 領収書や請求書を整理する: 収入や経費の証拠となる書類は、日付順や項目別にまとめて保管しておきましょう。ノートに貼ったり、封筒に入れたり、スキャンしてデータ化したり、ご自身のやりやすい方法で構いません。
- 不明点は早めに調べる/相談する: 「これって経費になるのかな？」「この取引はどう記録すればいいんだろう？」といった疑問は、そのままにせず、国税庁のウェブサイトを見たり、税務署に問い合わせたり、必要であれば税理士に相談したりして解決しましょう。
まとめ
ギグワーカーにとって記帳は、確定申告を正しく行い、ご自身の事業を把握するための基本です。最初は難しく感じるかもしれませんが、ご自身の状況に合った方法を選び、少しずつ慣れていくことが大切です。
手書き、Excel、会計ソフトと、記帳方法にはそれぞれ特徴があります。まずはご自身が最も始めやすいと感じる方法で、収入と経費の記録を始めてみましょう。取引が増えたり、青色申告を検討したりする際には、会計ソフトの利用も非常に有効な選択肢となります。
記帳を習慣にすることで、確定申告直前に慌てることなく、正確な申告を行うことができます。不明な点があれば、税務署や専門家などの信頼できる情報源に確認しながら進めてください。
この記事が、ギグワーカーの皆様が記帳に取り組むための一助となれば幸いです。