青色申告で賢く節税！ギグワーカー向け65万円控除の申請ステップ
ギグワークで収入を得るようになり、税金や確定申告について考え始めた方もいらっしゃるかと思います。特に、収入が増えてきた際に気になるのが「どうすれば税金を抑えられるのだろうか」という点ではないでしょうか。
確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。白色申告は手続きが比較的シンプルですが、青色申告を選ぶことで、大きな税金上のメリットを受けられる可能性があります。その代表的なものが、「青色申告特別控除」です。この控除を最大限に活用できれば、納める税金を大きく減らせることが期待できます。
この記事では、ギグワーカーの方が青色申告で受けられる最大のメリットである「65万円特別控除」の仕組みと、その適用を受けるために必要な具体的な申請手続きについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。
青色申告と白色申告の違いと青色申告のメリット
まず、確定申告における青色申告と白色申告の基本的な違いを理解しておきましょう。
- 白色申告:
- 事前の承認申請は不要です。
- 記帳は比較的簡単な「単式簿記」で行うことが認められています（収入と経費を日付順に記録するなど）。
- 税金上のメリット（特別控除など）は少ない、またはありません。
- 青色申告:
- 事前に税務署長の承認が必要です。
- 原則として「複式簿記」による記帳が必要です（資産、負債、資本の増減も記録する専門的な記帳方法）。
- 様々な税金上のメリットが用意されています。
青色申告の最大のメリットの一つが「青色申告特別控除」です。これは、事業所得や不動産所得がある場合に、所得金額から一定額を差し引くことができる制度です。この控除額には、10万円、55万円、そして最大の65万円の3つの区分があります。
青色申告特別控除65万円とは？ なぜ節税になる？
青色申告特別控除65万円とは、事業の所得金額から最大65万円を差し引くことができる制度です。所得税や住民税は、この所得金額に基づいて計算されます。つまり、65万円の控除を受けることで、その分だけ税金の計算のもとになる所得が減り、結果として納める税金が安くなるという仕組みです。
例：所得が300万円の場合
- 白色申告の場合: 所得300万円に対して税金が計算されます（実際にはここから各種所得控除が差し引かれますが、ここでは比較のため単純化します）。
- 青色申告で65万円控除を受ける場合: 所得300万円から65万円が差し引かれ、235万円に対して税金が計算されます。
同じ所得でも、税金の計算対象となる金額が65万円も少なくなるため、大きな節税効果が期待できるのです。所得税だけでなく、住民税の計算にも影響します。
65万円控除を受けるための要件
青色申告を行い、さらにこの最大の65万円控除を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
- 事業所得または不動産所得であること: ギグワーカーとしての収入は、一般的に「事業所得」または「雑所得」に区分されます。青色申告は事業所得または不動産所得が対象です。継続的に安定した収入があり、独立・自営で活動している場合などは事業所得と認められる可能性が高いです。
- 青色申告であること: 事前に税務署に「青色申告承認申請書」を提出している必要があります。
- 複式簿記による記帳: 原則として、正規の簿記（複式簿記）の原則に従って日々の取引を記帳する必要があります。白色申告の単式簿記に比べて複雑ですが、会計ソフトなどを活用すれば比較的容易に行うことができます。
- 貸借対照表と損益計算書の作成・提出: 確定申告の際に、複式簿記に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を提出する必要があります。
- 確定申告書を期限内に提出: 確定申告の期限（原則として毎年3月15日）までに、確定申告書と上記書類を提出する必要があります。
- e-Taxによる申告または優良な電子帳簿保存: 65万円控除の適用を受けるためには、上記の要件を満たした上で、以下のいずれかを満たす必要があります。
- e-Tax（電子申告）で確定申告書を提出する。
- 電子帳簿保存法に基づいた「優良な電子帳簿」で記帳し、その帳簿に関する情報を申告書に添付して提出する。 現在ではe-Taxでの申告が一般的で、会計ソフトを使えばe-Tax連携も比較的簡単に行えます。
もし、上記6の要件を満たせない場合でも、それ以外の要件（複式簿記、書類提出、期限内申告）を満たしていれば、55万円の青色申告特別控除を受けることができます。
青色申告を始めるための具体的なステップ
「青色申告特別控除65万円を受けたい！」と思ったら、まずは以下のステップで手続きを進めましょう。
ステップ1：税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出する
青色申告を行うためには、事前に税務署に「青色申告承認申請書」を提出して承認を受ける必要があります。多くの場合、個人事業を開始した際に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」（開業届）と同時に提出します。
- 提出先: 納税地を所轄する税務署
- 提出期限: 青色申告の承認を受けようとする年の3月15日まで。その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2ヶ月以内。
- 入手方法: 国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。税務署の窓口でも入手可能です。
開業届と青色申告承認申請書には、氏名、住所、マイナンバー、事業内容などを記載します。開業届には屋号や開業日、事業所の所在地なども記載が必要です。書き方については、国税庁のサイトに記載例がありますので参考にしてください。
ステップ2：事業用の口座やツールを準備する
青色申告では複式簿記による記帳が必要になります。日々の事業の取引（収入や経費の支払いなど）を正確に記録するため、以下の準備をしておくと便利です。
- 事業用の銀行口座: プライベートの口座と分けることで、お金の流れが明確になり記帳がしやすくなります。
- 会計ソフト: 複式簿記での記帳は手書きでは煩雑ですが、会計ソフトを利用すれば簡単に行えます。簿記の知識があまりなくても、取引内容を入力するだけで自動的に複式簿記の形式で記帳が進み、確定申告に必要な書類（損益計算書、貸借対照表など）も作成できます。
ステップ3：日々の取引を記帳する
ステップ2で準備した会計ソフトなどを使い、収入（売上）や経費などの取引を毎日または定期的に記帳していきます。領収書やレシート、請求書などを保管しておき、それに基づいて正確に記帳することが重要です。
ステップ4：確定申告書類を作成し、期限内に提出する
確定申告の時期（原則として毎年2月16日～3月15日）になったら、記帳した帳簿をもとに確定申告書類を作成します。会計ソフトを使っていれば、帳簿から自動的に必要書類が作成されます。
作成した確定申告書と必要書類（青色申告決算書など）を、期限内に税務署に提出します。65万円控除を受けるためには、e-Taxでの電子申告を行うか、優良な電子帳簿で記帳している必要があります。
まとめ
ギグワーカーとして活動し、ある程度の収入が見込めるようになったら、青色申告を選択することを検討する価値は十分にあります。特に、青色申告特別控除65万円は、所得税や住民税を大きく減らすことができる強力な節税手段です。
65万円控除を受けるためには、事前に税務署への申請（開業届と青色申告承認申請書の提出）が必要であり、また複式簿記による記帳が求められます。これらの手続きは最初は少し難しく感じるかもしれませんが、会計ソフトなどを活用すれば、思ったよりスムーズに進めることが可能です。
まずは、国税庁のウェブサイトで「個人事業の開業・廃業等届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」の様式を確認してみましょう。税務署や税理士に相談することもできます。
青色申告を始め、正しく記帳・申告を行うことで、節税メリットを享受し、ご自身のギグワーク事業をより安定したものにしていきましょう。
※税法は改正される可能性があります。最新の情報は国税庁のウェブサイトをご確認いただくか、税務署または税理士にご確認ください。